人工呼吸器をつけている人は、事故にあった人、ALSなどの神経筋疾患、脳梗塞などで呼吸信号が脳から出ない場合、または喉・口・鼻・気道などに障害があって呼吸できない方です。正常な方の中にも睡眠時は呼吸信号が更に弱くなるため「睡眠時無呼吸症候群」と診断されることもあります。今回はこちらのサイトを参考にさせていただきます。レスピカルディア社 


人工呼吸器 どんな人がつける?

りょう
脊損やALS、脳梗塞もある

脳の病気・神経経路である脊髄の病気(脊髄損傷)などで、そのまま人工呼吸器利用者になられる場合があります。ALS患者は神経から筋肉への信号伝達が徐々にうまくいかなくなるので、人工呼吸器を使われるかたもいらっしゃいます。ALSも難病ですが、ALS以外の難病をお持ちの方や、先天性疾患で人工呼吸器を使う必要がある方もいらっしゃいます。新生児から人工呼吸器が必要になることもあるそうです。

人工呼吸器を使う睡眠時無呼吸症候群

りょう
治療を受けると寝起きスッキリ

最近は睡眠時無呼吸症候群で人工呼吸器を使う場合も増えてきています。睡眠時無呼吸症には、閉塞性(Obstructive Sleep Apnea)と中枢性(CSA)とがあります。閉塞性は空気の通り道(気道・喉・口・鼻など)が物理的に狭くなっていることが原因で起こります。中枢性は脳からの呼吸信号が正常に出ない(伝わらない)ことが原因です。

睡眠時無呼吸症候群は、疲労・日中の眠気が継続して、自動車事故につながることで社会問題になりました。最近問題になっているのは、低酸素がつづくことで認知障害、睡眠障害がいわれています。睡眠時無呼吸症候群は循環器クリニックで診断されることが多いと思います。その理由は、心臓病(特に心不全)と同時に診断されるからです。心臓病と同時に診断されるので入院や死亡のリスクも心臓病と同じくらい高くなります。

中枢性睡眠時無呼吸症候群

りょう
突然死の原因にもなる

中枢性の睡眠時無呼吸症候群は、脳から信号が正常に伝わらないために起こります。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群

りょう
肥満だけが原因ではないよ

閉塞性の睡眠時無呼吸症候群は、空気の通り道が細くなるために呼吸が細くなって起こります。睡眠時無呼吸症候群の大部分がこちらになります。肥満が原因の場合と、肥満意外が原因の場合があります。ですので、睡眠時無呼吸症候群と聞いただけで「肥満?」と結び付けないようにしましょう。思い込みの場合があります。

睡眠時無呼吸症候群(閉塞性と中枢性)の説明

人工呼吸器に代わる植え込み式の治療装置

りょう
発想の転換だと思いました

この睡眠時無呼吸症候群を治療するための植え込み式治療装置があるそうです。その装置の治療成績は

治療成績
  • 睡眠障害の軽減・睡眠の質の改善・覚醒の大幅な減少・日中の眠気の大幅な軽減
  • 中枢性無呼吸指数を96%削減
  • 患者の88%でAHI低下
    (AHIは、睡眠1時間あたりの無呼吸および低呼吸の合計回数のこと)
  • 酸素飽和度低下イベントの大幅な減少
  • 患者の 78% が生活の質の改善

このようになります。睡眠時無呼吸症候群以外でも使える装置だとうれしいのですが、どうなのでしょうか?

人工呼吸の革命なるか?|レスピカルディア社

りょう
ゾールは呼吸器で有名なブランドですね

レスピカルディア社は、2006 年に設立され、2021 年に ZOLL(ゾール社:医療機器大手のメーカー)に 買収されています。この会社は、中枢性睡眠時無呼吸症候群に特化した装置を得意としていますが、親会社のゾール社は植え込み式治療装置に特化した会社のようです。

中枢性睡眠時無呼吸症候群の患者は閉塞性睡眠時無呼吸症候群の患者よりも少ないですが、原因不明で重症化リスクの高い患者への利用が考えられます。脳が睡眠中に呼吸を刺激する適切な信号を呼吸筋に送ることができないために起こる疾患ですので、日本国内での中枢性低換気症候群という疾患がこの中に含まれるとすると、多くの方が利用できるようになるかもしれません。

中枢性睡眠時無呼吸症候群を治療するレメディシステムの紹介

植え込み式の人工呼吸器

りょう
ペースメーカーを流用したのかも

レスピカルディア社の植え込み式治療装置の名前は「レメディシステム」といいます。この装置は、植込み型心臓ペースメーカーと同じような形状をしていますし、心臓ペースメーカーと同じような植え込み場所です。よって、植え込み手技も同じような手術になるのかもしれません。皮膚の局所麻酔だけでも安全に施行できそうです。会社設立は2006年で、レメディシステムのFDA承認は2017 年 10 月です。

植え込み式人工呼吸器の仕組み

りょう
センシングもできる優れもの

レメディシステムは、胸部の神経 (横隔神経) を刺激して、呼吸を制御する大きな筋肉 (横隔膜) に信号を送信する植込み型システムです。脳が呼吸信号を神経から送信するのと経路で刺激が繰り返されます。前胸部上部の皮下にジェネレーター(刺激装置本体)を植え込み、そこから伸びる2本のペーシングリードを静脈内に植え込みます。2本のうち1本は刺激リードで、もう1本は呼吸を感知するセンシングリードです。こうすることで、呼吸パターンを継続して自動監視し・安定した呼吸を睡眠時に提供しています。

植え込み後の患者さんによっては、刺激や皮下の装置による不快感があるかもしれません。刺激出力の調整することで解決できる場合もあります。植え込まれた人工呼吸器システムを取り出す場合も外科手術によるリスクが発生します。

植え込み式人工呼吸器の手術

りょう
局所麻酔で2時間

循環器内科医による植え込みができます(米国では、更に簡便な外来手術で可能だそうです)。心臓ペースメーカーと同じように透視(レントゲン)を見ながら植え込みリードの位置確認を行うようです。植え込みリード2本は、静脈内の分岐を確実にカーブさせる必要があるため、リードデリバリー(リードの定位置配置)システムに特徴があります。この会社では「次世代 EL」 「EL-Xモデル」と呼ばれています。植え込み手順を簡素に標準化することによって、確実にリードを定位置配置できるようにしています。

もちろん、外科的に植え込まれるため手術リスクがあります。痛み・腫れ・感染などが主な手術リスクになります。

植え込み式人工呼吸器の手術

植え込み式人工呼吸器の最新バージョン

りょう
さらにユーザーフレンドリーへ

現状の装置の欠点を改良したものが最新バージョンになります。この会社の記事には次世代バージョンとして次の記載がありました。

次世代バージョン
  • 寿命の延長
    バッテリー寿命が40%延長
  • 患者様に優しい形状
    小型・薄型、 サイズが25%縮小、丸みのあるエッジ設計。
  • 簡易インプラント
    シングルリード・シングルポートシステム(1本のリードから刺激を与えて呼吸を感知し植え込みを簡素化)
  • DRēAM View
    ソフトウェア(remedē Reports):患者に合わせた治療を効率的に行い、夜間の詳細な診断データ解析を強化。
  • ELシステム:現在のIS-1リードとの互換性あり。

植え込み式人工呼吸器の適応

りょう
適応拡大するといいですね

医師による診断が必要です。これまでの臨床試験結果から成人患者の中等度から重度の中枢性睡眠時無呼吸症候群に治療効果が明らかになっています。そのため医師による診断も「成人患者の中等度から重度の中枢性睡眠時無呼吸症候群」であることを確認します。

植え込み手術が行われた後は、MRI検査やジアテルミー (特殊な温熱療法) を受けることができません。 心臓ペースメーカーや植え込み式除細動器などとの併用するときは、植え込み装置同士が相互作用していないことを確認するテストが別途必要です。

植え込み式人工呼吸器のいい点

りょう
夜間だけのサポートらしいです

横隔神経をペーシングする装置ですので、より生理的な呼吸と陰圧呼吸を再現できます。

生理的な呼吸の効果
  • 自動継続治療
    夜間に自動作動開始、患者の特別な操作は不要
  • 継続的効果
    6ヶ月の中枢性無呼吸指数の平均が81%減少、12か月後には93%減少
  • 患者による感想
    患者の95%が「この医療処置を受けることを希望」

植え込み式人工呼吸器は日本国内でも広まるか?

りょう
脊損でも使えるといいなぁ

この装置のお値段までは調べきれていませんが、日本の医療保険がどこまで許容できるかという問題があります。睡眠時無呼吸症候群を減らせば、心臓病のリスクも減らせるなら、日本国内の健康保険で許容されると思います。ところで「レスピカルディア社は、2006 年に設立され、2021 年に ZOLL(ゾール社:医療機器大手のメーカー)に 買収されています」と書きました。

ZOLL(ゾール社)についてですが、このような記事がありました。

旭化成株式会社(本社:東京都千代田区、社長:小堀 秀毅)の子会社であるZOLL Medical Corporation(本社:米国マサチューセッツ州、CEO:Jonathan Rennert、以下「ZOLL社」)は、中枢性睡眠時無呼吸症(Central Sleep Apnea、以下「CSA」)に対する植え込み型神経刺激デバイス「remedē®(レメディー)System」の製造・販売を行う米国の医療機器メーカーRespicardia, Inc.(本社:米国ミネソタ州、CEO:Peter Sommerness、以下「Respicardia(レスピカルディア)社」)を買収することを決定し、その手続きを4月9日(米国東部時間)に完了しましたのでお知らせいたします。

旭化成 2021年04月12日 ZOLL Medical Corporationによる米国Respicardia, Inc.の買収について

これは、何を意味しているのかというと、この植え込み式人工呼吸器のレスピカルディア社は、旭化成の傘下にあるということ。日本国内へ植え込み式人工呼吸器が登場することも「大いにありえる」と思いました。

まとめ|人工呼吸器 どんな人がつける?

人工呼吸器をつける人は、事故にあった人、ALSなどの神経筋疾患、脳梗塞などで呼吸信号が脳から出ない場合、または喉・口・鼻・気道などに障害があって、呼吸できない方です。正常な方の中にも、睡眠時は呼吸信号が更に弱くなるため「睡眠時無呼吸症候群」と診断されることもあります。今回はこの「睡眠時無呼吸症候群」の中でも一部の中枢性睡眠時無呼吸症候群を植え込み式人工呼吸器で治療する方法をお伝えいたしました。この治療が、日本国内でも広まることを願っています。

りょう
それじゃあまた、バイバイ
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