みなさんは、ご自宅まで帰ってこられましたか?帰宅できるまで長い期間がかかったと思います。お疲れさまでした。そして、おめでとうございます。在宅でも在宅なりの不便なことはありますが、どうか末永く快適に過ごしてくださいね。このページでは在宅に戻るまでの準備とそれからについて、少しだけお話したいと思います。

在宅呼吸器へ移行する準備と人生の意味

自宅に戻る準備では、生活を支えてくれる公共サービスのことを知っておきましょう。意外とお金がかかるものです。医療費や介護費用、日用品や生活維持費用、自宅の改装費などもあります。判断や決断を求められることはないかもしれませんが、知っておくことは自分自身を当事者として再認識するはじめの一歩になります。そして、電源やトラブル対応です。
生命維持装置の電源

一般家庭の契約電力量は30アンペアが多いです(都市部のマンションだと、それほど電気を使わない場合も多いので30Aで足りるのかもしれませんが)。医療機器や他にも電源が必要なものが多いためブレーカーが落ちないように、事前に電力会社へアンペアを増やしておいてもらいましょう。
その時に人工呼吸器を使用していることも電力会社の人に伝えておきます。災害時に電力確保が必要な人のリストに載せてもいましょう。
介護保険などで使えるサービスが便利

次のようなサービスが使えることになっています。介護保険制度の一般的なお困りごとはまず、ケアマネジャーとよく相談します。ここでは、どのようなことを事前に考えておけばいいのか、ということだけ頭に入れておいてください。
- 訪問関係
訪問介護・訪問入浴・訪問リハ・訪問看護・訪問診療・重度訪問介護・ヘルパー - 通所関係
療養通所介護デイ・医療型短期入所・レスパイト - 用具関係
福祉用具・介護ベット・エアマット・車椅子・移動用リフト昇降機・人工呼吸器外部バッテリー蘇生バック・パルスオキキシメーター・ーコミュニケーション機器・意思伝達装置・吸引器(足踏み式なども災害時に便利)・回路・カニューレ・アンビューバッグ - 環境
自宅改造・環境整備・後方支援病院・災害時の準備
介護保険・指定難病・身体障害者

上に書いたサービスの中で、指定難病医療受給者証と身体障害者手帳と介護保険証では、受けられるサービスに違いがあります。在宅療養することになったら、病院の相談室や保健所、市役所高齢介護課や障害福祉課などで、対応を決めていただきます。自分や家族が把握しておく必要はないかもしれませんが、私自身はなるべく知っておこうと思っていました。
人工呼吸器の医療費

人工呼吸器を装着していると、医療費がたいへんなことになるのでは?と心配ですね。医療費は助成が受けられます(生活費を助成してもらうよりもある意味簡単に)。医療費の自己負担額には上限があり、それ以上払わなくてもいいようにもなっています。消毒などの衛生材料は保険適応外ですので、生活必需品と同じように買うことになります。衛生材料は病院と同じでなくてもいいです。安価な代用品や、病院が購入している、安値で買える業者を教えてもらうといいです。

とはいっても、ただではないですし、生活費のほとんどがそこに消えていくと思います。ドラッグストアや購入するお店のポイントなども活用して(ポイ活)上手に節約していくといいです。在宅では経済面も重要です。自分でキッチリ把握しておきましょう。
人工呼吸器を使っている場合

人工呼吸器を使っているので、清拭(せいしき)してもらい・更衣してもらい・浣腸をしてもらい・摘便してもらう。体位変換してもらい・良肢位を保ってもらうなどのケアをしてもらう。看護師さんの他にもたくさんのスタッフに協力してもらいます。やってもらっていると思うと心苦しいので、私もチームメンバーの一人だと思っています。

医療的な研修を受けたヘルパーさんが家族や看護師さんと一緒に医療的ケアも行います(こういうことは内緒かもしれませんが)。人工呼吸器があると吸引の他にたくさんのサポートが必要です。ヘルパーさんには看護師さんがやり方の確認や指導をしてくださっています。私にも指導してくださいます。
自宅に戻るときにミーティングをした家族・看護師さん・社協の人・入浴サービスのヘルパーの人・業者さんやスタッフのかた。私も含めたみんなが1つのチームだと思うことにしています。
ひとり暮らし・日中だけひとりをめざす

ひとり暮らしを目指してみましょう。それには、医療的ケアや見守り・日常のケアを介護サービス担当者が安全に行えるかが大切なのですが、地域格差があります。看護師さんはそのときの立役者です。私に必要なサービスを公的に賄えるよう行政に掛け合ってくださることもあります。同じくケアマネさんも経験豊富なかただと、ボランティアさんを探してくださったり、他に使えるサービスと組み合わせて工夫してくださることもあります。そんな日常の小さな工夫が大きな自由につながることもあります。例えば、
カニューレ外れなどのトラブル対策

よくあることですが、カニューレ外れがあります。自身でも焦りますが、介護してくださっている人にとってもとても気を使われている部分です。
- 首とカニューレ・をリボンで固定、回路をベット柵へ洗濯ピンチで固定
- 事前にアラーム対応方法を家族・介護者へも伝えてもらう
- 訪問看護へ連絡するまえにできることはある
- アラーム:回路はずれ・緩みの確認・痰の詰まり・電源接続確認
在宅での実際は

私自身も初めての体験ですが、介護する人(家族とか)にとっても初めての体験です。できるのだろうか?どうやるのだろうか?不安がいっぱいですし、事前に勉強することもできません。必要になったときに教えてくれる人もいません。でもよく考えてみたら、そういうときのために障害を持った先輩がいるのです。
在宅看護スタッフに相談してみるといいです。何を相談するかというと「同じような療養者はいらっしゃいますか?お会いすることはできますか?」のようなことです。在宅で落ち着いてしばらくたっていても構いません。患者会もあります。そういうチャンスがあれば情報交換に参加してみます。入院・通院しているころは、患者や家族同士の接点があります。在宅になると外出機会がなくなります。新たにつながりを持つ機会も減るかもしれません。

- 生活のイメージができる
- 未知への不安から未来への安心につなげられる
- 生活の選択ができるようになる(かも)
- 知ることで前向きになれる
- 「こんなはずでは!」を減らせる
メリットがあれば、積極的に家族会に参加してみようと思えるかもしれません。ですが焦らないでくださいね。まずは、生活をつくることができればいいのですから。

在宅看護協会のホームページにもかいてあるのですが、「人工呼吸器を装着して在宅療養を希望される方には、積極的に先輩療養者とつなぐ橋渡し」もされているそうです。実際の生活を見るということは、専門家の説明や病院の退院指導よりも現実的で継続して導き励まし合える仲間になれるからです。共に生きるという対等な立ち位置でのつながりができるといいですね。
生活上のストレス

将来に対して、不安や恐怖・身体不動によるストレスがあります。それによって孤独感・拘束感・イライラ・無気力もふくらんでいきます。いらだちには、このようなものがあります。
- そうじゃない
- ちょっと違う
- もういい
- 帰って

我ながら、ひどいことばだと思います。介助してくださる人も悪気があるわけではないです。どうにかして力になりたいと思ってくださっているのに、です。お互いが苦しくなって信頼関係が崩壊することもあるかもしれません。
介助してくださるスタッフ同士で情報交換されていると思います。あるいは励まし合ってたりもあるかもしれません。チームメンバーとして絆を深めているかもしれません。そのチームには私も入っていなくてはなりません。
私の人生の意味は

人生の意味や運命・宿命に気づいたとき(輝かしい人生と思えていなくても)、新たな使命を見い出せるかもしれません。そのときに私の人生の物語を「書き換えていく」事ができるのだと思います。私の場合は、このブログを完成させることが「人生の意味」です。
「人生の意味」活動イメージ(例)

「呼吸器を装着して一般の方々と真っ暗な映画館で吸引や呼吸器の作動音を気にしながら映画を見るのは躊躇する。でも、大好きなRRR(今一番人気のインド映画の名前)観たいなあ」
そんなときは、自分で地元の映画館へ相談してみます。「映画を愛する人にこそ観てほしい」といってもらえるかもしれません。ご厚意で映画館を貸し切りにしてくださるかもしれません。「ずっと無理だと思っていたけれど、私も映画が観たい!」という人があつまるかもしれません。そうなると、ここから先はみなさんにも何をすればいいか想像がつくと思います。
- 電源の確保
- 各々のスペースの確保
- 吸引やケアができる照明の明るさ
- SOSを気づけるよう音響の調整

映画館にもさらに協力いただかなくてはなりません(以上、「呼吸器装着でも堂々と映画を楽しもう!国立病院機構東埼玉病院」より)。
- 地域の理解を得て、地域社会を育てる(地域の理解力と介護力を上げる)
- 仲間ができる
- 全てをあきらめない自信
生きているうちに一度実家に帰りたい、兄弟に会いたい

「高速で往復5時間、吸引器や呼吸器の電源の確保、必要な医療材料、もしもの事態に備えて往復経路上の大きな病院のチェック、診療情報提供書、看護サマリーをもって、看護師同伴、社会福祉協議会から車いす用の大型車を借りて息子さんの運転で奥様と4人で出かけました」というお話がネット上に上がっていました。
- 吸引器・呼吸器電源確保
- 必要な医療材料
- 往復経路上の大きな病院チェック
- 診療情報提供書
- 看護サマリー・看護師同伴
- 車いす用の大型車

病気をしてから会うことのなかった兄弟との対面で、最初はその様子に驚かれていたようですが、すぐに自宅に担ぎ上げてくださったそうです。介護している奥様・子どもたちを心からほめてくださったとのことでした。「離れて暮らす身内の理解も得られて本当によかった」そうです。実行することは、明日へのエネルギーにもなります。
まとめ|在宅呼吸器へ移行する準備と人生の意味
お金のことも心配ですし、検索してもでてこない特殊な未来も不安でしかないですね。在宅では人工呼吸器のトラブルもあります。アラームがしょっちゅう鳴りますし、実際に危険な目に合うことも想像できます。それでも生活が落ち着いてきたら、諦めていたことにもチャレンジしてみてください。外に行きましょう。仲間を探しましょう。今の時期は花見もできます。もうすぐ海水浴の季節もやってきます。船の旅なんかどうでしょうか。ちょっとぜいたくかな。
