慶應義塾大学は細胞移植して分化した神経細胞の機能を研究されていらっしゃいます。現在は細胞移植による神経再生に取り組まれています。神経再生はどこまで進んでいるのか、みなさんと一緒に研究室のページを読み解いていきたいと思います。こちらを参考にしています。この引用の全記事は読みやすく興味を引きますのでどうぞ、ご覧になってくださいね。

岡野:当時は、私も神経幹細胞で脊髄損傷をどう治せるのか考えあぐねていました。中村先生には阪大で細胞の培養方法などの技術的な部分を教えた一方で、私も脊損に関するいろいろなアイディアをいただきました。

世界初、iPS細胞を用いた脊髄再生医療の実現へ Keio Times(特集)

脊髄損傷の細胞移植による神経再生はどこまでできるのか?

ふゆ
お酒は二十歳(はたち)になってから!

末梢神経は再生するそうなのですが、中枢神経は再生しないといわれてきました。脳も中枢神経になりますが、脳細胞は再生しないと小さい時から聞いていましたね!「子どもがコーヒー飲むと脳細胞が減るわよ、脳細胞は一回減ったらもとにはもどらんのよ〜」「未成年でタバコ吸うと脳細胞がやられるんだよ、脳がやられるともう2度ともとに戻らんよ〜」みたいな会話ですね。その中枢神経の再生ができるようにがんばっていらっしゃるのが上記の先生です。

末梢神経細胞は再生する

ふゆ
ドイツの生物学者シュワン先生から名付けたそうよ

末梢神経は切れてしまっても細胞が死んでいなければ再生しやすいようです。専門的には「シュワン細胞が神経再生を促してくれる」というそうです。シュワン細胞というのは、神経の外側を覆っている絶縁体の髄鞘(ずいしょう)を作る細胞なのですが、ここで重大発表があります。神経細胞が通っているから絶縁体ができるのではなくて、絶縁体ができたところに神経細胞が通っていくのだそうです!(神経細胞といってますが、専門的には軸索:じくさくといいます)

シュワン細胞の役割

ふゆ
やり手なのね

シュワン細胞はこのような役割があります。

シュワン細胞の役割
  • 神経細胞の向かう道を作る(回路図)
  • 神経細胞の軸索をつなぐ(配線)
  • 髄鞘を形成する(絶縁)

神経細胞が次につながる細胞に向かう道を作って、その道に沿って神経細胞の軸索(じくさく)が伸びていって、軸索のまわりに髄鞘(ずいしょう:絶縁体)を作るという作業です。これで、元通りの末梢神経が再生されるのですが、なにかすごいと思いませんか?シュワン細胞はどうやって神経細胞がつながる先まで道を作れるのか?そんな地図をもっているのだろうか?こんなことを疑問に思いながら読み進めてくださいね。

シュワン細胞が神経再生を導いている

ふゆ
神経って培養できるのね

シュワン細胞が神経再生を導いていることがわかったのは、シャーレで培養していた神経細胞が「視神経の髄鞘の上では軸索を伸展させることができず、末梢神経の周囲にあるシュワン細胞の上では伸展できた」からでした。そして同時に視神経の周りにある細胞が神経細胞が伸びるのを止めていることもわかってきました。抑制物質がわかるとそれを取り除けばいいのですが、抑制物質の話は後にしましょうか。

中枢神経は再生されない?

ふゆ
やっぱり無理なんじゃない!

中枢神経は一度損傷されると再生されないそうです。やっぱりそうか、と思ったのは私ばかりではないと思います。脳梗塞を起こした人も事故で脳挫傷や脊髄損傷になったかたも、同じ思いだと思います。だから後遺症が続くわけですし、苦しいリハビリを続けているわけです。中枢神経が再生されない理由は最近になってわかってきたそうです。理由が分かれば、再生するようにできるかもしれない。その研究を慶應義塾大学で行われているのだと思います。

神経再生を妨害するものがある|グリア細胞

ふゆ
この先、通行止め?

神経細胞の周りにグリア細胞があります。この細胞の表面に軸索(じくさく:神経の腕)が再生されるのを阻害するタンパク質が発生することがわかりました(軸索が伸びるのを止める)。このグリア細胞は中枢神経が損傷すると、ケロイドのように組織が盛り上がって神経細胞を通行止めにもします。そして、間違えて伸びてきた軸索にはタンパク質で「ここから先は通行止めですよ」と伝えているのです。神経の学者たちは「中枢神経が再生しないのはこれが原因だ!」と、思ったに違いありません。

アストロサイトは神経再生を手伝っていた

ふゆ
賛成なの?反対なの?

グリア細胞は神経細胞以外の細胞をまとめて呼んでいる呼び名なのですが、その中に星型のアストロサイトという細胞があります。グリア細胞の中のアストロサイトが、上記の損傷後の神経再生を「止めている」と考えられていました。ところが神経再生を「助けている」のではないか、という逆のことがわかったそうです。どうやってわかったかというと「アストロサイトでできた組織の盛り上がりを失くすと神経が再生しない」「神経抑制物質よりも神経再生物質をアストロサイトがたくさん出している」という実験結果からでした。

アストロサイト|本来の役目は?

ふゆ
冤罪だったのね

神経細胞の回りに存在する星形のアストロサイト細胞は、神経損傷後に傷口に集ってきます。それは、傷口を塞いで、ばい菌を防ぐためのようです。それと同時に神経細胞を再生するような司令を出していますが、神経細胞に「ここから先は通行止めですよ」と教えているのです。これで、アストロサイトは善良な市民なのに、無実の罪を着せられていたことがわかりました。

神経再生に必要なものは?

ふゆ
真犯人を見つけなきゃ

アストロサイトが無実だったとわかっても、あいかわらず中枢神経を再生することはできません。やはり、つらいリハビリしかないのでしょうか?ビタミンB12が神経再生に大切な働きをしている事はわかっています。ビタミンB12は、みなさんも既存薬として処方を受けていると思います。神経再生メカニズムもわかってきました。神経阻害物質についてはどうでしょうか。

神経阻害物質がある

ふゆ
神経ってやっぱりわかんないわ

シュワン細胞のところで、神経細胞を培養していたところ視神経には伸びていかなかったという話を書きました。そこで神経が再生するのを阻害するメカニズムがあることを前ふりしています。この阻害物質のことをNogoと呼ばれていたそうですが(なにかの略号かと思いますが、わかりやすい名前ですね、「行かない」のような命名は)。その他にも何種類か発見されて軸索再生阻害タンパク質と呼ばれるようになります。

神経阻害物質Nogoをコントロールする物質がみつかる

ふゆ
阻害する物質をコントロールする物質って?

神経阻害物質Nogoをコントロールする物質も発見されました。神経が成長するときには神経阻害物質が抑制されて、それ以降は神経の成長を止める役目を持っています。ところが、Nogoを抑制しても中枢神経の機能は回復せず、損傷した神経回路も再生はしなかったそうです。これは、「Nogo以外にも軸索再生阻害因子が存在し、これが強い作用を持っているために、Nogoのみを抑制しても治療効果が認められない」かったためです。

神経阻害物質Nogo以外の軸索再生阻害因子を探せ

ふゆ
他にもあったってことね?

数種類の軸索再生阻害因子が発見されました。いずれも神経細胞の回りにできる物質で神経が損傷を受けると、損傷周囲に増えます。この軸索再生阻害因子をブロックする機能中和抗体をラット投与すると運動機能が改善しました。こうして、軸索再生阻害酵素を抑制する物質も作られました。

幹細胞移植

ふゆ
細胞移植だけじゃ、だめなのかも?

幹細胞移植(神経細胞・アストロサイトなどのシュワン細胞を補うこと)と、軸索再生・神経阻害物質抑制を組み合わせることで、中枢神経再生ができるかもしれません。交通事故などの外傷による脊髄損傷は、日本で年間約5,000人の新規脊髄損傷患者が発生し、累計患者数は20万人以上と言われています。

「移植された細胞は脊髄組織内でニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトを中心に分化・生着することで、さまざまなメカニズムを介して脊髄損傷から運動機能の改善に導くと予想されております。一方で、本治療により運動機能が改善する詳細なメカニズムを直接証明する報告は限られていました」慶應義塾大学での研究はこのメカニズムの解明までつながるかもしれません。

神経回路図はどうやって作られるのだろうか?

ふゆ
ミステリーよ、ミステリー

いったん切れた神経がまた再生されて、神経ネットワークを形成する方法はまだ謎だそうです。それがわかれば、リハビリテーションの方法が変わるかもしれませんし、人工頭脳を作ることもできるかもしれません。まだまだわからないことだらけのようですが、私としては、とりあえず脊髄損傷を直してもらえればそれだけでうれしいです。

まとめ|脊髄損傷の幹細胞移植による神経再生はどこまでできるのか?

慶應義塾大学は幹細胞移植による神経再生で有名ですね。ロボットリハビリとも組み合わせているようなことも聞きました。一連の研究で運動機能が改善するメカニズムを解明できるかもしれません。幹細胞移植にいたるまでバックグラウンドの研究が積み上がっていたことも今回初めてわかりました。私は幹細胞移植の研究にたいへん興味を持っています。

ふゆ
お便りしてみようかしら
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