たみ、39歳。長男のタローは10歳、次男のジローは8歳になった。穏やかな日々が過ぎているように見えて、私の心の中には、ずっと拭い去れない澱のようなものがあった。それは、タローが生まれ、そして二年後にジローが生まれた頃から、強烈に感じ始めた思いだった。

「たまには、一人になりたい」

その思いは、日に日に募っていった。家の中にいても、心が休まることはない。刺激がない。ただ、時間が過ぎていくだけ。外に出たい。どこか遠くへ、一人で。好きな旅行に行きたいわけじゃない。もし行くなら、子どもたちも、ましてやタダシもなしで、私一人で行きたい。

そんな大それたことじゃなくてもいいのだ。お金のかかることじゃなくて、もっと身近な場所で。近所に住む友人たちの家で、友情を育むのもいいかもしれない。市議会議員の奥さんや、米農家の奥さん。顔見知りの友人は何人かいる。彼女たちと、ただおしゃべりをして、笑い合いたい。あるいは、工場を営むご夫婦の家で、畑仕事をさせてもらうのもいい。土に触れ、汗を流せば、何か違ったものが見えるかもしれない。

とにかく、タダシと一緒にいたくない。息苦しいのだ。彼がそばにいるだけで、なぜか心が締め付けられる。何をしていても、楽しくない。なぜだろう。明確な理由があるわけじゃない。彼は、別に私を傷つけるようなことを言ったわけでもないし、酷い態度を取るわけでもない。ただ、そこにいるだけなのに、私の心は鉛のように重くなる。


聞いてもらえない愚痴

ある日の夕食時、タローとジローがそれぞれ保育園での出来事を興奮気味に話している。私は相槌を打ちながら、ふと、今日あった些細な出来事をタダシに話してみようと思った。

「今日ね、保育園のママ友と話してたら、〇〇さんのところも、やっぱり大変みたいでさ…」

私の言葉の途中で、タダシは「ふーん」と生返事をしながら、スマートフォンをいじり始めた。私の話を聞いているようには見えなかった。

「聞いてる?」

そう尋ねると、彼は顔を上げて「ああ、聞いてるよ」と答えるが、その目はすぐにスマートフォンの画面に戻ってしまう。私は、それ以上話すのをやめた。私の愚痴は、彼にとっては取るに足らない、どうでもいい話なのだろう。

何度か、そうやって話しかけては、空虚な返事しか返ってこないことに疲れてしまった。私は、彼に何かを期待することをやめた。私の心の中のモヤモヤも、不安も、不満も、すべて私一人で抱え込むしかないのだと悟った。

私だけの場所がほしい。タダシも、子どもたちもいない、本当に私だけの空間。そこに行って、ただぼんやりと過ごしたい。誰にも邪魔されず、誰のことも気にせず、ただ息をしたい。

この思いは、一体いつまで続くのだろう。終わりが見えない息苦しさに、私はそっと目を閉じた。

愛情表現が足りない

※この物語はフィクションであり、登場人物や団体名は架空のものです。実在の人物とは一切関係ありません。
※このブログは 電話占い【ココナラ】 もう、一人で悩まないで の提供でお送りしています。



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